土砂災害対策で自治体が押さえることは?危険箇所の把握から運用まで解説

土砂災害対策を進めるときに、最初にぶつかりやすいのは「何から整理すればいいのか分かりにくい」という点です。危険箇所の把握、区域の確認、警戒情報の見方、避難の判断、住民への伝達、発生時の現地確認など必要なことが多く、しかも平時と災害発生時で求められる動きが変わります。土砂災害対策の全体像を整理しながら、実際の運用で押さえたい考え方まで順に整理していきます。
土砂災害の対策を考える前に自治体が把握しておきたいこと
土砂災害の主な種類
土砂災害対策を考えるときは、まず「何が起こるのか」を分けて把握する必要があります。土砂災害の代表例として、内閣府は斜面が突然崩れ落ちる「がけ崩れ」、斜面の一部または全部がゆっくり移動する「地すべり」、山腹や川底の石や土砂が一気に流れ下る「土石流」を挙げています。
災害の種類が違えば、発生しやすい場所も、警戒の仕方も、住民に伝えるべき内容も変わります。自治体実務では、土砂災害をひとまとめに捉えるのではなく、まず種類ごとに整理して考えるほうがその後の備えや判断につなげやすくなります。
危険箇所や警戒区域をどう把握するか
次に必要なのが、地域のどこに危険があるのかを地理的に把握することです。住民に対しては土砂災害から身を守るうえで、まず自宅や地域が土砂災害警戒区域かどうかを確認することを基本とされており、都道府県やハザードマップポータルサイト、市町村が作成する土砂災害ハザードマップで避難場所や避難経路を確認するよう案内しています。
国土交通省も土砂災害警戒区域等の指定状況や警戒避難体制に関する情報を土砂災害対策の基礎情報として整理しており、自治体にとっても要注意区域の把握は住民向け周知のためだけではなく、どこを優先して警戒してどこに避難情報を出す可能性が高いかを整理するための土台になります。
自治体が優先して備えるべき場所を整理する視点
ただし、区域指定の有無だけで優先順位を決めるのは不十分です。土砂災害警戒区域等でなくても、付近にがけ地や小さな沢があれば注意が必要です。つまり、指定区域は重要な基準ですが、それだけで地域の危険を完全に言い切れるわけではありません。
自治体としては区域情報に加えて、住家の分布、要配慮者が利用する施設、主要道路への影響、避難所や避難経路との位置関係まで見ておく必要があります。人員が限られる現場では危険箇所を一律に扱うよりも被害が出たときに影響が大きい場所から優先して備える考え方のほうが運用しやすくなります。国土交通省が要配慮者利用施設の避難確保計画や警戒避難体制の構築を土砂災害対策の一部として並べているのも、その一貫となります。
自治体が進める土砂災害対策の全体像

被害を防ぐためのハード対策
土砂災害対策には、まず被害そのものを起こりにくくするためのハード対策があります。国土交通省の砂防関連情報では、土石流、地すべり、がけ崩れなどの災害ごとに対策の考え方が整理されており、砂防施設などによって土砂の流出や斜面の崩壊を抑える役割が位置づけられています。
自治体の立場ではこうした施設整備の有無や対象範囲を把握したうえで「施設があるから安心」と捉えるのではなく、整備だけではカバーしきれない区域も前提にして運用を考える必要があります。
避難行動につなげるためのソフト対策
一方で、住民の命を守るには、施設を整えるだけでは不十分です。土砂災害対策では、警戒区域の把握、警戒情報の確認、要配慮者利用施設の避難体制づくり、警戒避難体制や運用ルールの整理なども欠かせません。
つまり、土砂災害対策は設備を整えることだけで完結するものではなく、危険を知り避難につなげるための準備まで含めて考える必要があります。自治体実務では危険箇所を把握することと住民が実際に避難できる状態をつくることをセットで進めることが重要です。
平常時に進めておきたい備え
災害発生時の対応を安定させるには平常時の整理が欠かせません。危険箇所をあらかじめ確認しておくこと、雨が強まった際にどの情報を見て判断するかを決めておくこと、警戒避難体制や運用ルールを整えておくことはいずれも有事の際の動きを支える土台になります。
自治体としては、危険区域の確認、避難情報の発信基準の共有、関係部署との役割分担、要配慮者が関わる施設への対応などを平時のうちに整理しておくことで災害が起きたときの判断と伝達がばらつきにくくなります。
土砂災害の前兆や警戒情報を避難判断にどう活かすか
土砂災害の前兆として見ておきたい変化
土砂災害は、発生前に斜面や周辺環境に異変が出ることがあります。国からは、がけや地面にひび割れが入る、斜面から水が湧き出る、井戸や川の水が濁る、湧き水が止まる、小石が落ちてくる、地鳴りがする、雨が続いているのに川の水位が下がるといった変化には要注意と提示されています。
こうした異変に気づいたときは、周囲にも知らせながら早めに避難することが重要です。自治体としてもこれらを住民向けの注意喚起に使うだけでなく、通報を受けた際に状況を判断するための情報として整理しておく必要があります。
土砂災害警戒情報の見方
気象庁の土砂災害警戒情報は、大雨警報(土砂災害)の発表後、命に危険を及ぼす土砂災害がいつ発生してもおかしくない状況になったときに、都道府県と気象庁が共同で発表する情報です。市町村長の避難指示の発令判断や住民の自主避難の判断を支援する情報として位置づけられており、”土砂キキクル“は、その危険度の高まりを5段階で色分けして示します。
気象庁は土砂キキクルを土砂災害警戒情報や大雨警報(土砂災害)などを補足する情報としており、危険度が高まっている詳細な領域を確認するのに使えます。自治体の実務では市町村単位の情報だけでなく、区域内のどこで危険度が高いのかを細かく見られる点が重要です。
避難情報の発信や情報伝達で押さえたいこと
土砂災害警戒情報は、大雨警報(土砂災害)が発表されたあと、命に危険を及ぼす土砂災害がいつ発生してもおかしくない状況になった段階で出される情報です。市町村が避難指示を判断する際や、住民が自主的に避難を考える際の重要な材料になります。
あわせて確認したいのが、危険度の高まりを地図上で細かく見られる情報です。土砂災害警戒情報が市町村単位で示されるのに対し、危険度分布では区域内のどこで危険が高まっているのかをより細かく把握できます。自治体実務では市町村全体として捉えるだけでなく、区域の中のどこを優先して警戒すべきかを見極めることが重要です。こうした情報を組み合わせて見ることで、避難情報の対象区域を絞ったり、初動対応の優先順位を整理したりしやすくなります。
土砂災害発生時に自治体が優先して対応したいこと
まず確認すべき場所と情報
土砂災害の危険が高まった場面では、まず地域の中でどこに被害が出るおそれが高いのかを絞って把握することが重要です。対応の対象を広く取りすぎると初動が散りやすくなるため、危険度が高まっている場所ともともと土砂災害のリスクが高い区域を重ねて確認する視点が軸になります。
地域全体を一律に見るのではなく、優先して見るべき場所を早い段階で整理することが災害発生時の判断を支えます。そのうえで確認したいのは住家の集まり方、要配慮者が関わる施設の位置、主要道路や避難経路への影響です。危険箇所そのものだけを見ていると実際にどれだけ影響が広がるのかが見えにくくなります。
どこで土砂災害が起きる可能性があるかに加えて、どこに人がいて、どこが止まると避難や救助に支障が出るかまで見ておくことで、確認すべき地点の優先順位が定まりやすくなります。平時からハザードマップなどで危険箇所を確認し、雨が強まった際にどの情報に注意するかを整理しておくこともこうした初動を支える土台になります。
例えば、埼玉県では以下のリンク先サイトのように自治体HPにて、土砂災害警戒区域の情報をまとめて掲載していたりします。
参考:土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等の指定について
関係部署や関係機関との連携
災害対応では危機管理部門だけで判断を抱え込まないことが重要です。土砂災害への対応では、危機管理・土木・道路・福祉・消防など、見ている情報も優先順位も異なる部署が同時に動きます。たとえば、危険度の高まりを見ながら避難情報を検討する動きと道路の通行状況や施設の安全確認を進める動きは、別々に進みやすいものです。情報が部署ごとに分かれると全体の判断が遅れやすくなります。だからこそ、どの情報を誰が持ち寄り、どの単位で共有するかを平時から決めておくことが災害時の混乱を抑えるうえで欠かせません。
また、避難情報は出すだけで終わりではなく、実際の行動につながる形で運用する必要があります。自治体としては避難情報を出す部署、現場状況を確認する部署、住民や施設へ伝える部署がばらばらに動くのではなく、同じ状況認識を持ったうえで連動できる体制を整えておくことが重要です。情報の伝達と住民の避難行動がつながるようにしておくことで、有事の対応はぶれにくくなります。
現地確認に頼りすぎない体制づくり
土砂災害のおそれが高まる場面では、現地確認そのものが危険を伴います。危険が高まった段階では確認のために現地へ向かうことよりも、避難や情報伝達の準備を優先すべき局面があります。職員が危険箇所を直接見に行かなければ判断できない運用では、初動が遅れやすくなります。
また、避難情報は必要な地域に絞って出すことが前提になるため、その判断を支える情報が早く集まるほど無理のない対応がしやすくなります。だからこそ、現地確認が必要な地点と、遠隔や既存情報で把握できる地点を分けて考えることが重要です。災害発生時に毎回人が見に行く前提ではなく、危険が高まったときに優先地点の状況をできるだけ早く把握できる体制にしておくことが、限られた人員で対応するうえで現実的です。
限られた人員で土砂災害対策を実施するための考え方
優先順位を決めて運用する
人員が限られる自治体では、土砂災害対策を「できることを全部やる」という発想では回しにくくなります。実際には危険箇所の数に対して確認できる職員の数も時間も限られているため、あらかじめ優先順位を決めておくことが重要です。避難情報も必要な区域に絞って出す考え方が基本になるため、自治体の運用でも危険箇所を一律に扱うのではなく、住家が集中している場所、要配慮者利用施設がある場所、主要道路や避難経路に影響しやすい場所などから先に備える視点が必要です。
優先順位を決めておくことで、災害発生時の判断もぶれにくくなります。危険度が高まったときに、どこを先に確認してどこに先に情報を出すかが整理されていれば、限られた時間のなかでも初動をそろえやすくなります。土砂災害対策は施設整備だけで完結するものではなく、警戒避難体制や避難体制づくりも含めて考える必要があります。だからこそ、地域内のリスクを見ながら、優先して対応すべき場所を平時のうちに整理しておくことが重要です。
継続しやすい体制に落とし込む
対策は一度計画を作って終わりではありません。土砂災害対策を実際の運用として機能させるには、担当者が変わっても引き継げる形にしておくことが必要です。国土交通省の土砂災害対策の情報には、警戒避難体制の構築やマニュアル、要配慮者利用施設に関する避難確保計画などが含まれており、対策を継続的に回す体制そのものが重要な要素として扱われています。災害の発生時だけ動ける仕組みではなく、平時から確認・共有・更新ができる形になっているかが問われます。
継続しやすい運用にするには判断材料や対応手順を個人の経験に寄せすぎないことも大切です。誰が見ても危険箇所や対象区域が分かること、どの情報を見て避難情報を検討するかが整理されていること、関係部署と共有する項目が定まっていること。このあたりが揃っていると、災害時の対応が担当者個人の勘に依存しにくくなります。限られた人員で現実的に回すには、手間を増やすよりも、判断と共有を揃えやすい形に整えることが重要です。
遠隔で状況を把握できる環境を整える
土砂災害対策では警戒情報やハザードマップだけでは判断しきれない場面があります。危険度が高まっていることは分かっていても、実際に現地がどうなっているかが見えないと、避難情報の対象区域を絞る判断や関係部署との共有が難しくなることがあります。
その一方で、危険が高まったタイミングで職員が現地へ確認に向かうこと自体がリスクになる場合もあります。だからこそ、現地確認に頼りきらず、遠隔で状況を把握できる環境を整えておくことが、限られた人員で運用するうえで現実的です。
こうした課題に対して、状況把握の手段として検討しやすいのが防災カメラです。『ビューちゃんねる』は、自治体向けの防災カメラサービスとして、現地に行かなくても庁舎のPCや外出先のスマートフォンから状況を確認できる仕組みを提供しています。
危険箇所の様子を遠隔で把握できれば、職員の安全確保を図りながら、どこを優先して対応するかの判断材料を持ちやすくなります。土砂災害対策そのものを置き換えるものではありませんが、警戒情報、区域情報、現地状況の確認をつなぐ手段として考えると、運用に組み込みやすい領域です。
関連記事:防災カメラの導入で何が変わる?自治体の災害対応を劇的に変える4つのメリット
まとめ

土砂災害対策を自治体で進めるときは、まず災害の種類や危険箇所、警戒区域を把握し、どこを優先して備えるべきかを整理することが出発点になります。そのうえで、施設整備のようなハード対策だけでなく、警戒情報の見方、避難判断、住民への情報伝達、関係部署との連携まで含めて考えることが欠かせません。特に人員が限られる現場では、すべてを同じ重さで扱うのではなく、確認すべき地点や対応の優先順位を決めておくことが実務では重要になります。
そのなかで課題になりやすいのが、危険が高まった場面で現地の状況をどう把握するかです。情報は出ていても、実際の様子が見えないことで判断が難しくなることがありますし、確認のために職員が危険箇所へ向かうこと自体が負担になることもあります。そうしたときに、遠隔で状況を確認できる環境があると、限られた人員でも対応しやすくなります。
『ビューちゃんねる」は自治体向け防災カメラサービスとして、平時の備えから有事の状況確認までを支える選択肢のひとつです。土砂災害対策の運用を見直すなかで、状況把握の方法もあわせて整理しておくと、実際の対応は組み立てやすくなります。
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